鮮度の良くないアジを手に、暗澹たる気持ちで準備に入る。
テストはあらかじめ頭を落とし、腹出ししたアジを10分間で
2匹寿司ネタに切りつけるまでを行う。
腹を裂いて内臓を出すと、腹の中は溶け始めてあばら骨が
浮きそうになっている。

まず本番前に1回だけ仮テストを行う。6匹の内明らかに
柔らかい2匹を選ぶ。
3枚おろしをそこそこの感じで通過し、後半の皮引きの所で
4枚の半身の内1枚の皮が途中で切れてしまった!
皮引きは今まで失敗したことが無かったので、
魚を疑ってしまう。
仮テストを終えたところで先生方もアジの状態の悪さに
気が付いたようで、本テストの審査には考慮すると言っている。

本テスト1回目、時間に余裕が無いので自分が捌いた魚の状態を
チェックしている余裕は無かったが手ごたえは悪くない。
二人の先生がそれぞれ別々に審査して行く。
ところがなぜか私の魚だけ二人で相談している。何だろうか?

採点が終わり一人ずつ点数の発表と審査の内容について説明を受ける。
「Kさん、95点です。」
内心「ガクッ」
「腹の身が一枚小さくなり過ぎています。」
自分では気付かなかったが、確かに一枚だけ下端部が短い。
思うにあばら骨をすき取っている時に、身がドロドロになっていたので
余分にカットしてしまったのではないだろうか。
今となっては、はっきりしたことは分からないが、
もっとちゃんとした魚でテストを受けたかった。

本テスト2回目。時間が経ったため気のせいか更に魚の状態が
悪くなっているような気がする。魚の状態が悪いので作業がやり難く、
致命的なミスは無かったと思うが、終わってもすっきりしない。

採点発表「95点」
再び、そしてより重く「ガクッ」
「血合い骨が一本残っています。」
今迄血合い骨を残してしまった事は無かったが、確かに一本残っている。
言い訳無用だ。

2回のテスト共今迄失敗しなかったポイントで引っかかってしまった。
だがそれが現実、実力だ。
ハッキリ聞かなかったが、24人中一人は100点を取ったようだ。
95点は私を含めて数人いたようだ。