さて二日目。
2週間アルバイトとして働いた後に、社員採用されるかどうかが
決定されるので全方面的に油断はできない。
初日に続き本来の勤務時間の11時よりかなり早めに出勤する。
私は大学卒業後働き始めた時から、始業時間より早く出社したり
残業したりするのが嫌いであった。結局最初に就職した会社も
悪い会社ではなかったのだが、残業が嫌で辞めてしまった。
残業の無い日などあり得ないという事が常態化していた。
毎朝スタートから定時で帰る事を目指して、猛スピードで仕事を
こなしてゆく。めったにないが時間内に自分の仕事が片付いても
結局、課長から他人の仕事の手伝いを命じられ落胆する。
結婚して子供も出来ると益々もって早く帰りたくて仕方がない。
そんな気持ちで仕事をすること自体も嫌になる。
それで辞めてしまった。働き方改革なんて言う言葉が出来る、
何十年も前の話だ。
そんな、自分の時間に対する権利意識過剰の私であるが、
いま現在の最重要目標は社員採用してもらう事である。
なんだかんだ言ったって早く出社すれば、評価されることはあっても
マイナスになる事は無いであろう。
社員は9時半から出勤している。二日目つけ場に入ると
私より年上に見える人がいた。
「この人がつけ場のトップだろうか?」
若い人ばかりの店で初めて見る年長者だ。貫禄も十分。
この道何十年という叩き上げの職人さんだろうか?
「軍艦に乗せるキュウリの薄切りを切って見て。こんな風に。」
手本を見せてくれたが、明らかに私より下手だった。
お陰で緊張が少しほぐれた。