やはり私には3時間で到着というのは、まるで無理だった。
首都高を走るのは、いつだって恐怖だし、車を降りてからも
どちらに歩いて行けば良いのか分からない。
ようやく飲食人大学の看板を見つけた時には、約束の10時を
5分程過ぎていた。
既に授業が行われている教室に入ると、近くにいた生徒さんから
「こんにちは!」と声を掛けられる。
飲食人大学の授業は、実戦を意識して行われているとは聞いていたが
突然の見学者に対して躊躇なく挨拶ができる事に、ただ技術を教えている
だけでないという事が感じられた。
講師の先生一人に対して生徒が14人。生徒さんは期間3ヶ月の昼間コースで、
現在約1か月半経過した所だそうだ。
教室中にエビの殻を、から煎りする香ばしい香りが充満している。
「アラなども無駄にしません。これは茶わん蒸しの出汁に使います。」との事。
なるほど、私もエビの頭や殻は勿論捨てないが和食の出汁に使った事は無かった。
今度やってみよう。
「今日はアジとアオヤギ、銀鱈の西京漬けと茶わん蒸しをやります。」と先生。
なかなか素晴らしいメニューじゃないですか!でも西京漬けは、まだ今日は
食べられないよなぁー。あぁ、どうせ俺の分無いよなー。
私が妄想してる間にも皆さん卵を溶いたりミョウガの甘酢漬けを作ったり、
器具の片付けなどをしている。このあたりの作業は分担して行っているようだ。
10時半頃今日の魚が届く。アジは魚体に対して頭が小さく見える。つまり
よく太っているという事だ。アオヤギはでかい。まあ私が見るアオヤギは
潮干狩りに行った時にたまに採れるヤツなので、比較はできないが、デカい
というより厚みがある。ハマグリのようだ。いずれもさすがお寿司屋さんの仕入れる
魚という感じだ。
「この魚、何か分かりますか?」
「?...」頭と腹が取ってあって40センチほど。スズキのようだが違う。
「銀鱈です。」
なるほど、頭を落とした切り口の肉の白さ、黒っぽい皮の色。
確かに銀鱈だが切り身になったのしか見たことが無かったので
ピンと来なかった。
「これでちょっと休憩します。」