「二か月はあっという間ですよ」と先生方から、既に何度か言われた。
その通りだと思うし、それどころか二か月と言ったって土日は休みで、
実際は40日しかない。つまり4日というと10分の1な訳でして、心配性の私は
既に若干浮足立ってしまっている。
さて本日の授業はまず、ハマチの三枚おろしにしたものの片身を真空パックのした物が
一人一枚ずつ割り当てられた。コイツのあばら骨をすき取って背身と腹身の柵にして、
最終的にネタの大きさに切りつけた。柵にするまでは、細かいテクニックについては
「なるほどー」と思う所もあったものの、初めての事でもないので問題は無かった。
しかしネタの切りつけは、規定の大きさに一枚一枚揃えて切る事は難しい。
柵の幅や厚みは一定ではないので、大げさに言えば一枚一枚切り方を変えて
いかなければならない。どのように包丁を入れれば規定の大きさ、形、重さの
ネタが出来るのかイマジネーションが求められる。当然ながらこれは色々な意味で
非常に重要な作業で、握る人間にとっても変な形に切りつけてしまっては握りにくい。
シャリが出来上がったので、各自自分で切ったネタで食べたい分だけ握って
お昼ご飯となった。昨日までは昼飯を用意しなければならなかったので、これはとても
助かる。ネタはハマチだけなのだが、砂摺りの部分はバーナーで炙りにして柚子胡椒を
乗せたり、脂の少ない背身にマヨネーズを乗せて炙ったりといったバリエーションを
先生が教えて下さったので楽しく食べる事が出来た。
私は私生活では養殖魚はまず買わないし、最近やたらに炙りをやる寿司も若干冷ややかに
見ていた。しかし今日久し振りに養殖ハマチの脂に驚いたり、バーナーで
炙ったりしながらも食べてみれば悪くは無い。それを喜ぶ人の事も理解出来ない訳ではない。
飲食「業」であるからには、人が喜ぶものを提供するのが理には叶っているし、
「食」も文化と考えれば時代とともに変化するのも自然な事だろう。
でも、捌いたハマチのカマを貰って帰って夕食に食べて驚いた。マンスリーマンションなので
魚焼きグリルが無いし、調理器具もフライパン一個しか置いていない。
調味料は醤油と塩と砂糖だけは家から持って来た。
そこでそのカマをフライパンで照り焼きにしたのだが、脂ノリノリでホロホロのその魚は
完全にウナギのかば焼きになりきっていた。喜んでいいのかどうか分からなかったが、
確かに旨かった。